AI 画像診断を用いた膣分泌物塗抹検査の精度向上に向け、亀田総合病院と共同研究開発を開始

カーブジェン株式会社代表取締役:中島正和、本社:東京都品川区)は、膣分泌物塗抹検査における検査精度向上を目指し、医療法人鉄蕉会亀田総合病院(理事長 亀田隆明、所在地:千葉県鴨川市)と、AI画像認識技術開発に向けた共同研究を開始しましたことをお知らせいたします。

膣分泌物の塗抹検査は用手法で行われていることから、検査担当者による結果のばらつきを完全に回避することが難しく、医師による細菌性膣症の判断にも影響を与える可能性があります。そこで、本共同開発では、グラム染色画像、病原菌種等の患者情報をもとに AI(機械学習/深層学習アルゴリズム) による形態学的評価を行うモデルを確立し、細菌性膣炎の診断を支援するシステム構築を行います。詳細は【添付資料】をご覧ください。

将来的に、国内外の企業、アカデミア、その他関連機関等との更なる連携により、ソフトウェア医療機器として開発を進め、患者QOLの改善等に貢献します。

医療法人鉄蕉会亀田総合病院について

亀田メディカルセンターは、亀田総合病院を中心とした、亀田クリニック、亀田リハビリテーション病院などの医療サービス施設の総称です。千葉県南部に位置し、基幹病院としての役割を担う当センターには、診療科目34科(亀田クリニックは32科) を有します。外来診療から急性期の治療(入院)、急性期の治療を終えた回復期のリハビリまで、質の高い医療を提供することにより患者さんのQOL(Quality of Life:生活の質)の向上を目指しています。

・所在地:千葉県鴨川市東町929番地

・代表者:亀田隆明

・URL:http://www.kameda.com/

カーブジェン株式会社について

バイオロジーとデジタル技術の融合を通じて、独自に開発した AI 解析技術を細菌感染症分野に応用することを目指します。また、国内外の有力研究機関等とのオープンイノベーションを通じて世界規模の課題である薬剤耐性問題への貢献を目指します。

・所在地:東京都品川区上大崎2丁目24番13号 601

・代表者:中島正和

・URL:https://carbgem.com/jp/

【添付資料】

●イントロダクション

細菌性膣症は、妊婦の罹患率が約10%(1990年)、約15%(1995年)、約20%(2000年)で、さらに、厚生労働研究班の成績では 2008-2010 年で 27.9%と、増加傾向であることが分かっています。

出典:『細菌性膣症と早産について―腸内細菌叢の変化も含めて―』 齋藤 滋、塩﨑有宏 富山大学産科婦人科 (https://bifidus-fund.jp/meeting/pdf/17th/S2_4.pdf

●基礎知識

細菌性感染症とは、細菌が体内に侵入することにより起こる感染症です。その中でも細菌性膣症(BV:bacterialvaginosis)は、膣内の常在菌である Lactobacillus(乳酸桿菌; ラクトバチルス)が減少し、病原性細菌が増殖してしまうことで起こります。抗生剤、性交渉、腟の洗浄、ストレス、女性ホルモンの変動(ピル、生理など)の原因により、乳酸菌が減ることで発症しやすいといわれています。細菌性膣症は、膣分泌物を顕微鏡で調べて診断します。顕微鏡を用いた検査により、膣内の常在菌である乳酸桿菌が減少し、病原性細菌が増殖している状態が観察された場合に、細菌性膣症と診断できます。

●問題提起

現在、BVの診断法として最も主流であるのが、Nugent Scoreです。Nugent Scoreとは、膣分泌物擦過物をスライドガラスに塗り、グラム染色法による形態学的観察によって、膣内に存在する3種類の細菌の有無や量を調べてスコア化する検査法のことです。この検査は膣内の分泌物を採取するだけで行うことができるので、患者さんには痛みもなく簡便であり、非侵襲的であるという長所があります。

しかしながら、Nugent Scoreの判定は、スタッフの習熟が必要であること、さらには検査をする個人の技量により判定に誤差が生じるといった問題があります。また、地域や施設によっては経験豊富なスタッフの数が不足していることも問題点として挙げられます。

このようにして治療が遅れると、細菌による炎症が子宮内に及び、胎児炎症反応症候群が引き起こされたり、脳性麻痺、精神発達遅延、慢性肺疾患などの病気につながる可能性があります。これらの感染は上行性に波及するため、膣内細菌叢が変化する細菌性膣症は早産のリスク因子となり得ます。

●解決方法

本研究で開発を目指す自動画像分類アプリケーションが利用可能になることにより、これらの問題を低減させることができ、正確な細菌性膣症の診断・治療に貢献することができると考えられます。


参考文献

・細菌性腟症と早産について ―腸内細菌叢の変化も含めて―

齋藤 滋,○塩﨑有宏 富山大学産科婦人科

https://bifidus-fund.jp/meeting/pdf/17th/S2_4.pdf

・An Attempt to Classify Gram-Stained Vaginal Smears with a Nugent Score of 4 into Four Bacterial Morphotypes at First Prenatal Visit(2020/3)(妊婦初診時、腟内細菌グラム染色標本でのNugent Score 4の4細菌形態分類への試み)

https://www.scirp.org/pdf/aim_2020030415424927.pdf