【ホワイトペーパー/グラム染色】敗血症におけるグラム染色の有用性

敗血症におけるグラム染色の有用性

敗血症は「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態」であり、さまざまな臓器、細菌が原因となります。肺炎や尿路感染症、皮膚や腸管の感染症から発症することが多く、感染症の診断を行う上で、検体の採取による起炎菌の同定が重要です。敗血症診療ガイドライン2020年版では抗菌薬投与前に必要に応じて各種培養検体の採取が推奨されており、グラム染色についても「経験的治療に採用する抗菌薬を選択する際に,培養検体のグラム染色所見を参考にすること」を推奨しています [1]。グラム染色と比較して、各種の培養検査は結果判明までに時間を要することや、敗血症における血液培養の陽性率は69%と高くないという限界があります [2]。一方で、臨床像から感染源の可能性がある部位を推定し、グラム染色所見を参考にすることで抗菌薬を選択する方法は日常的に行われており、妥当性があります。また、グラム染色は安価、簡便、迅速に施行できることが利点です。

グラム染色の結果の適用における限界について

しかし、グラム染色の施行が敗血症の予後を改善させるというエビデンスには乏しく、ガイドラインでもエキスパートコンセンサスで弱い推奨に留まっていることに注意が必要です。検査施行者により感度・特異度が影響されることや、グラム染色所見のみで抗菌薬を選択すると、重症病態にも関わらず、不適切な抗菌薬が選択されるリスクが指摘されています。また、グラム染色の有用性に関するRandomized controlled trialが少なく、今後生存率の改善や、選択した抗菌薬の有効性などに関する検証を行うことが必要です[1]。

このような限界はありますが、感染部位とグラム染色から原因菌をある程度推測することが可能であり、早期に治療介入が必要な敗血症においてはグラム染色を積極的に行い、適切な抗菌薬を選択することが必要です。

参考文献

[1] 江木盛時他. 日本版敗血症診療ガイドライン2020 特別委員会. 日本集中治療医学会雑誌2021; 28: S1–411.

[2] CoburnB, Morris AM, Tomlinson G, et al: Does this adult patient with suspected bacteremia require blood cultures?. JAMA. 2012; 308: 502-11.

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