【論文/薬剤耐性】One-Healthの観点でのEnterococcus属菌の薬剤耐性の多様性調査
Executive Summary
- 目的:
- 腸球菌の一種であるEnterococcus 属は自然環境、動物の腸内に存在し、ヒトや家畜に用いられる抗菌薬の影響で耐性菌が出現している。
- Enterococcus 属の薬剤耐性に関してOne-Healthの観点で調査(ヒト、動物、環境を一体として調査対象とする研究)を行い、菌種と薬剤耐性の広がりについて調査する。
- 肉用牛への抗菌薬の使用による耐性菌の出現が、自然環境への伝播を通じてヒトへの潜在的な感染連鎖を起こす危険性があるか検討する。
- 手法:
- カナダのAlberta州において、ヒト、肉用牛、食肉処理場、肥沃な土地、自然河川、都市部と牛肥育場の排水から分離株を2年間にわたり収集した。
- 結果:
- Enterococcus faeciumとEnterococcus faecalisは、都市部の廃水(90%)とヒトの臨床分離株(99%)の主要種であり、Enterococcus hiraeは、肉用牛(92%)と肥育場の排水ます(60%)の主な分離株であった。
- 肉用牛由来のEnterococcus faeciumでは、β-ラクタム系薬およびキノロン系薬に対する耐性がそれぞれ3%、8%であったのに対し、ヒト臨床分離株ではそれぞれ76%、70%に認められた。
- テトラサイクリンおよびマクロライドに対する表現型耐性は、分離元にかかわらずEnterococcus属菌の間で広く認められた。
- 臨床バンコマイシン耐性Enterococcus faeciumは高い頻度で多剤耐性を示した(β-ラクタム系薬、マクロライド系薬およびキノロン系薬に対しても耐性を示した)。
- 考察
- Enterococcus属菌のテトラサイクリン系薬、マクロライド系薬への耐性率の高さは、ヒト及び動物に抗菌薬が広く使用されている点を反映している可能性が高い。
- 肉用牛に最も豊富に存在するEnterococcus hiraeが環境中や食肉に多く存在せず、ヒト臨床分離株とは異なる種である点を考慮すると、肉用牛に存在する耐性菌が人への感染には重要な役割を果たさない可能性がある。
- 分離菌株間の薬剤耐性の違いは、One-Health(ヒト、動物、環境)の各部門における抗菌薬使用習慣の違いを反映していた。
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