【論文/抗菌薬】オミックス解析に基づく抗菌薬耐性遺伝子の健康リスク評価
Executive Summary
- 目的:
- 抗菌薬耐性遺伝子(ARG)は、細菌の間に広く存在している。しかし、すべてのARGが公衆衛生に深刻な脅威を与えるわけではなく、リスクの高いARGを特定することが重要と考えられている。そこで、我々は、ヒト関連性、遺伝子移動性、宿主病原性を考慮したオミックス解析に基づくARGリスク評価フレームワークを開発することを目指した。
- 手法:
- ヒトに関連し、かつ移動性のあるARG(全ARGの3.6%)を最もリスクが高いと分類し、さらに、病原体の間ですでに存在する「現在の脅威」(ランクI、3%)と、病原体以外から出現した新しい耐性である「将来の脅威」(ランクII、0.6%)に区別することでリスク評価のフレームワークを用意し、種々の文献データ等と比較しフレームワークとしての妥当性を評価した。
- 結果:
- 開発したフレームワークでは、73の「現在の脅威」ARGファミリーを同定した。このうち35は、WHOや他の文献で提案された37の高リスクARGのうちの1つであり、残りの38は病院等で保管されているプラスミドに有意に濃縮されていたことがわかった。また、フレームワーク開発後に公開された全ての病原体ゲノムを評価した結果、病原体に最近移行したARGは、本フレームワークのランクII(「将来の脅威」)に有意に濃縮されていることが確認された。
- 最後に、糞便微生物移植ドナーの腸内細菌ゲノムを対象に本フレームワークを適用した。その結果、ARGはゲノムの73%に広く存在するものの、高リスクのARGを含むゲノムは8.9%に過ぎないことが分かった。
- 考察:
- 本フレームワークは、現在および将来の抗菌薬耐性の脅威を特定するための容易なアプローチであり、マイクロバイオームベースによる治療リスクの低減など臨床への応用の可能性に繋がると考えられる。
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