- 英文タイトル:Intravesical bacteriophages for treating urinary tract infections in patients undergoing transurethral resection of the prostate: a randomised, placebo-controlled, double-blind clinical trial
- 雑誌名:The Lancet
- 著者:Lorenz Leitner et al.
- 掲載年月:2021.3
- URL:https://onl.sc/ZpWRRup
Executive Summary
目的:
抗生物質投与に代わる尿路感染症の治療法として、市販のバクテリオファージカクテルを用いた膀胱内バクテリオファージ療法が有効であるかどうかを調べることを目的とする。
手法:
Alexander Tsulukidze National Centre of Urology, Tbilisi, Georgiaで、無作為化プラセボ対照臨床試験を実施した。
- 期間:
2017年6月2日から2018年12月14日 - 対象者:
経尿道的前立腺切除術(TURP)を予定していた18歳以上の男性で、複雑性尿路感染症または再発性単純性尿路感染症を発症しているが、全身性感染の徴候がない97名の患者 - 治療法:
Pyoバクテリオファージ(Pyophage:20 mL)またはプラセボ(20 mL)を1日2回7日間二重盲検法で膀胱内に投与、または非盲検標準治療として全身に抗生物質を投与した。 - 具体的な手法:
97名(Pyoバクテリオファージ28名、プラセボ32名、抗生物質37名)がそれぞれ該当する治療を受け、治療終了時または試験からの離脱時に、尿道カテーテルを用いて尿培養を行った。
結果:
- 定量的尿検査の結果、尿培養の正常化を定義とした治療の成功率について治療群間の有意差は認められなかった。
- 尿の正常化は、Pyoバクテリオファージ群では28例中5例(18%)、プラセボ群では32例中9例(28%)、抗生物質群では37例中13例(35%)で見られた。
- 有害事象は、Pyoバクテリオファージ群では6例(21%)、プラセボ群では13例(41%)、抗生物質群では11例(30%)で発生した。
考察:
尿路感染症治療としての安全性・有効性の観点から、バクテリオファージ療法は抗生物質治療に対して非劣性だが、プラセボに対しては優位性は認められなかったと考えられる。しかし、有害事象例が比較的少なかったことから、バクテリオファージ療法は十分な安全性が見込まれる。本研究は尿路感染症患者に対するバクテリオファージ療法の有効性を示唆するものではないが、バクテリオファージ治療の将来と今後の大規模臨床試験のための重要な学習点を明らかにした。