細菌感染症との闘いの歴史と薬剤耐性問題について

【ホワイトペーパー/薬剤耐性】細菌感染症との闘いの歴史と薬剤耐性問題について

1.感染症の歴史

 2020年に発生したCOVID-19のパンデミックにより世界中で多くの人々が苦しみ、命を落としてしまっています。一方で、人類による感染症との闘いの歴史は古く、人類史上大きな影響を受け続けてきました。特に病気の原因や治療方法が十分に解明されていなかった時代、多くの人々が感染症により命を落としました。たとえば14世紀にヨーロッパを中心に大流行したペストは黒死病とも呼ばれ、当時の全世界人口の20%以上に及ぶ推計5000万~2億人の命が奪われました[i]。ほかにも赤痢・結核・コレラなどの感染症は人類にとって大きな脅威であり続けました。しかし19世紀後半、科学の進歩により感染症を引き起こすのは細菌等の病原体であることが判明すると、ワクチンや抗菌薬(抗生物質)の開発、また公衆衛生の向上により、死者数は激減することとなります。

[i]健康医学予防協会「第35号 特集 人類と感染症」ほか

2.抗菌薬の開発

 抗菌薬(抗生物質)とは、「細菌に対する抗微生物活性を持ち、感染症の治療、予防に使用されている薬剤」のことです[ii]。様々な微生物が作った物質をもとに薬剤が開発されてきました。対象となる病原体を壊したり、増殖を抑えたりする効果があります。

 世界で一番初めに抗菌薬が発見されたのは1920年代後半です。A.Flemingによって青カビに含まれるペニシリン(Penicillin)という物質が、黄色ブドウ球菌の発育を抑制することが発見されました。この発見を契機に、ストレプトマイシンなど、さまざまな抗菌薬が探索・開発されるようになりました。抗菌薬の成果は画期的で、かつて国民病と呼ばれた結核も不治の病ではなくなるなど、感染症との闘いに大きな影響を与えました[iii]

[ii]厚生労働省健康局結核感染症課. (2020). 抗微生物薬適正使用の手引き 第二版
[iii]平井敬二. (2020). 日本発の抗菌薬開発の歴史と今後の展望について. 日本化学療法学会雑誌. Vol.68 No.4 July 2020

3.薬剤耐性(AMR)問題

 抗菌薬が急速に世の中に普及し始めた1940年代以降、抗菌薬への耐性を獲得した薬剤耐性菌が見つかるようになりました。すべての細菌は何らかの薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)を持つと言われており、中でも使用可能な複数種類の抗菌薬への薬剤耐性を持つと考えられる細菌は「スーパーバグ(superbugs)」と呼ばれています。既存の抗菌薬が効かないため薬剤耐性菌の治療は難しく、代替薬として多くの治療薬の処方が必要となり患者の負担も増加してしまいます。

 この薬剤耐性菌の発生を防止するためには、疾患の原因となる菌種を特定し、適切な抗菌薬の処方と必要のない抗菌薬を処方しないという取組みが極めて重要となります。しかし、適切な抗菌薬選定・処方に求められる菌種同定のためには、検査機器が高価・検査時間が長いなどの課題があり、思うように薬剤耐性問題の対策に取り組めていません。そのため現在も、医師による経験的治療による抗菌薬の不適切使用が改善されず、薬剤耐性菌の発生が世界的な問題となっています[iv]

[iv]AMR臨床レファレンスセンター ホームページ https://amr.ncgm.go.jp/general/1-3-1.html

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