AMR対策に向けた病院内のチーム

1. はじめに

抗菌薬が効かない(薬剤耐性:Antimicrobial Resistance 、AMR)微生物を作らない、広げないことは、病院内外問わず重要視されていますが、2018年の診療報酬改定にてAST(Antimicrobial Stewardship Team)を院内に組織することの加算が追加されたなど、その動きは加速しています。今回は病院におけるAMR対策チームの役割、そして抱えている課題を整理しました。

2. チームの構成

主な院内のAMR対策のチームとして、AST(Antimicrobial Stewardship Team)とICT(Infection Control Team:ICT)の2つがあります。

ASTとは抗菌薬適正使用支援チームのことで、抗菌薬の不適切な使用や長期間の投与を防ぎ、AMR微生物を発生あるいは蔓延させないために、患者さんへの抗菌薬の使用を適切に管理・支援するための実働部隊です。厚生労働省が提示した、2016年のAMRアクションプランの目標4「医療、畜水産等の分野における抗微生物剤の適正な使用を推進する」で掲げられていることを受け、2018年の診療報酬改訂の中にASTの組織加算が追加されました。具体的には、抗菌薬使用量・使用日数および耐性率などの定期的な評価、抗菌薬使用指針の作成およびアップデート、さらには定期的な採用抗菌薬の見直しなどを行うことで、適切な抗菌薬の使用を目指します。

一方で、ICTとは感染制御チームのことで、細菌やウイルス等の微生物の院内感染を防ぐための部隊です。AMR対策の文脈においては、AMR微生物の院内感染を防止するため、院内全体の感染動向の早期把握や感染対策を適切に管理しています。具体的な活動としては、院内での感染症のサーベイランス、ラウンド(院内環境のチェック等)、院内職員に対する教育活動やコンサルテーション、院内感染防止にかかる院内での規定やマニュアル作りを行うことで、院内感染を防ぐ対策を実行しています。

例として、国立国際医療研究センターの体制を見ると(図1)、これらのチームはどちらも、医師、薬剤師、看護師、検査技師などによって構成されており、ICTはさらに事務部門等も含まれ、互いに連携しながら院内のAMR発生を抑制に努めています。


図1. 院内感染対策部門組織図(国立国際医療研究センター病院 
「ICTとAST(http://www.hosp.ncgm.go.jp/phar/010/040/040/ict.html)」を参考に作成)

3. AMR対策チームにおける課題と今後の対策

これらAMR対策チームの普及が今後求められてきますが、課題として、感染症治療・感染制御に関する専属の薬剤師を配置できるほどの人的余裕がないことが挙げられます。ASTには一定期間以上の経験年数を経た専門の医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師等を専任で配置し、そのうち 1 名を専従配置することが条件とされています。[ⅰ] 米国のガイドラインでは AST の中核メンバーは医師と薬剤師とされており、我が国においても薬剤師への期待が非常に高まっています。[ⅱ]しかし、ASTに薬剤師を専従で配置するための人的資源の確保が(その他の職種も含め)難しく、加算を算定できる施設は限られてしまっていると考えられます。そのため、感染症治療・感染制御を専門とする薬剤師の育成と人員の充足が、ASTのさらなる普及のための課題の 1 つと言えます。[ⅲ]

また、現在のASTによる活動では、広域抗菌薬使用例や血液培養陽性例、耐性菌検出例、抗菌薬長期処方例等に対し、prospective audit and feedbackが一般的です。即ち、対象となる抗菌薬が処方された後に評価し、介入が必要と判断すれば、臨床医の合意の下に抗菌薬の変更や中止を行う対策です。薬剤使用量の抑制には寄与すると言われていますが[ⅳ]、更に適正使用を推進する意味では、診断初期の抗菌薬選択についてまではASTが支援しきれていないという点も、課題として挙げられます。そこで、その対策として、富山大学では「アクティブ・コンサルテーション」という取り組みがなされています。この取り組みは、感染症の疑いがある初期の段階から医師がASTに相談することで、微生物学的な検査も含めて抗菌薬選択の段階からASTによる支援を受けることができるというものです。これによって、より早期に適切な治療を行うことが可能になると考えられています。[ⅴ]

[ⅰ]平成30年度診療報酬改定 Ⅱ-1-5)感染症対策や薬剤耐性対策、医療安全対策の推進② 厚生労働省

[ⅱ]Centers for Disease Control and Preventon :

Core Elements of Hospital Antibiotic Stewardship Programs

[ⅲ]抗菌薬適正使用支援チーム(AST)の取り組み 前田真之 Masayuki MAEDA 昭和大学薬学部臨床薬学講座感染制御薬学部門助教

[ⅳ] Chung G W et al., Antimicrobial stewardship: a review of prospective audit andfeedback systems and an objective evaluation of outcomes. Virulence 2013; 4: 151-7

[ⅴ]『海外と比較した我が国のantimicrobial Stewardshipの現状と課題』富山大学 感染予防医学教授 山本 善裕

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